01はじめに|この記事でわかること
要点:この記事は、リニューアルを控えて「いまのデータをどう引き継ぐのか」で迷っている方に向けたものです。2000年創業のWeb制作会社ZenWeb Japanが、実際の移行作業で使っている手順と、抜けやすい箇所をそのままお伝えします。
リニューアルの打ち合わせで、いちばん答えに詰まるご質問があります。「いまのホームページのデータは、そのまま新しいほうに移るんですか」。答えは、移るものと移らないものが混ざっている、です。
デザインや構成の話は前もって決めていても、データの話は公開直前まで置き去りになりがちです。そして置き去りにしたぶんだけ、公開後に「あの資料が見当たらない」「問い合わせメールが届かない」といった連絡が来ます。この記事でお伝えするのは次の3つです。
- 移行対象の分け方。いまあるものを4つの箱に仕分けすれば、判断はほぼ終わります。
- 抜けやすい箇所。どの種類のデータで移行漏れが起きたのかを、実際の割合でお見せします。
- 公開前後の段取り。いつ何を確認すれば、公開当日に慌てずに済むのかをまとめました。
本題に入る前に、サーバーやドメインの変更を伴うリニューアルの流れをまとめた動画をご紹介します。
サーバーやドメイン変更を伴うホームページリニューアル案件の手順を徹底解説
出典動画:YouTube
02データ移行で実際に動かすもの
要点:ホームページのデータ移行で動かすものは、目に見える中身と、目に見えない設定の2種類に分かれます。原稿や画像は前者、転送設定やメールの受け取り先は後者です。抜けやすいのは、たいてい後者です。リニューアルのご相談でも、最初にこの2つを分けてお聞きしています。
「データ」と一言で呼んでいますが、中身はかなり違うものが混ざっています。実際に手を動かす対象を並べると、次のようになります。
- 原稿と画像。各ページの文章、写真、図版、ロゴ。手作業で移すことが多い部分です。
- 過去記事とお知らせ。ブログや新着情報の蓄積。件数が多いほど、移す方法の検討が必要になります。
- 添付ファイル。会社案内やカタログのPDF、資料ダウンロード用のファイル。
- URLと転送設定。ページの住所が変わるときに必要な、旧URLから新URLへの案内です。
- フォームの送信先。お問い合わせが届くメールアドレスと、自動返信の文面。
- 解析タグ。アクセス解析やサーチコンソールの計測用コード。
- メールとドメインの設定。独自ドメインのメールアドレス、DNSの向き先。
前半の3つは見ればわかるので、抜けてもすぐに気づきます。やっかいなのは後半の4つです。見た目には何も起きていないのに、問い合わせだけが届かない。順位だけが落ちる。そういう不具合の形で表に出てきます。順位の話はリニューアル時のSEO引き継ぎチェックリストでも詳しく扱っています。
03移行対象の棚卸し|4つの箱に分ける
要点:いまのページを一覧にして、そのまま移す・書き直す・まとめる・やめる、の4つに振り分けてください。全部を移そうとするから作業が膨らみます。現状の数え方はリニューアル前のサイト診断が参考になります。
棚卸しは、ページの一覧を作るところから始まります。管理画面のページ一覧、サイトマップ、アクセス解析の3つを突き合わせれば、いまあるページはほぼ拾えます。そのうえで、1ページずつ次の箱に入れていきます。
- そのまま移す。内容が古くなっておらず、アクセスもある。会社概要やサービス紹介の多くはここです。
- 書き直す。残したいけれど中身が古い。料金や実績のページによくあります。
- まとめる。似た内容が複数ページに散っている。1本にまとめたほうが読みやすくなります。
- やめる。役目を終えたキャンペーンページや、何年もアクセスのないページ。
この仕分けで気をつけたいのは、「やめる」に入れたページにも住所があることです。外部のサイトから紹介されていたり、印刷物にURLが載っていたりします。消すのは構いませんが、その住所をどこに向けるかまで決めてから消してください。
もうひとつ。アクセスが少ないという理由だけで消すのは早いです。年に数件でも問い合わせにつながっているページはあります。判断に迷ったら、そのページ経由の問い合わせがあったかどうかを営業の方に聞いてみてください。
棚卸しの段階から相談したい方へ
いまのホームページを拝見すれば、残すページとやめるページの目安をその場でお伝えできます。 リニューアルの相談窓口を見る →
04データ種類別|移行漏れが起きた割合
要点:移行漏れがいちばん多かったのは、原稿でも画像でもなく「旧URLの転送設定」でした。次いで独自ドメインのメール設定です。どちらも見た目に出ないため、公開後しばらく誰も気づきません。
種類ごとに、公開後に手直しが必要になった割合をまとめました。
| データの種類 | 公開後に手直しが必要になった割合 |
|---|---|
| 旧URLからの転送設定 | 38% |
| 独自ドメインのメール設定 | 29% |
| アクセス解析のタグ | 24% |
| 添付ファイル(PDF・資料) | 21% |
| フォームの送信先メール | 17% |
| 過去のブログ・お知らせ | 12% |
| 本文と画像 | 5% |
出典:ZenWeb Japanが手がけたホームページリニューアル案件の集計(日本国内、2019〜2026年上半期)。サイトの規模により結果は変わります。
上の2つと下の2つで、性格がはっきり分かれています。本文と画像は誰が見ても違いに気づくので、公開前の確認で拾えます。一方、転送設定とメール設定は正しく動いていないことが見た目に出ません。だから、確認する人を決めておかないと素通りしてしまいます。
見た目でわかるデータほど漏れにくく、設定だけのデータほど漏れやすい。移行の確認は、この順番の逆から始めてください。
05移行の手順|公開前に終わらせる5ステップ
要点:公開前の作業は、一覧づくり・バックアップ・移行・対応表づくり・確認の5つです。順番を入れ替えないでください。とくにバックアップを後回しにすると、やり直しがきかなくなります。全体の工程はリニューアルの期間の目安で確認できます。
ホームページのデータ移行を公開前に終わらせる手順
次の5つを順番に進めれば、公開当日に残る作業はほとんどなくなります。
- いまあるものを一覧にする。ページ一覧、画像とPDFの置き場所、フォームの送信先、解析タグ、メールアドレスを1枚の表にまとめます。ここが土台になります。
- まるごとバックアップを取る。ファイル一式とデータベースの両方を保存し、手元にも1部残します。サーバー内だけに置くと、解約と同時に消えます。
- 新しいサイトへ中身を移す。原稿と画像を入れ、過去記事を移し、PDFを置き直します。この段階では公開せず、確認用の場所で作ります。
- 旧URLと新URLの対応表を作る。ページの住所が変わるものだけを、旧・新の2列で書き出します。ここが転送設定のもとになります。
- 公開前に通しで確認する。リンク切れ、画像の抜け、フォームの送信テスト、メールの受信テストを一通り行います。
実務でとくに抜けやすいのは4つ目です。対応表は制作会社が作るものだと思われがちですが、どのページをどこに向けるかを決められるのは、事業のことを知っているご担当者だけです。作業は任せていただいて構いませんが、行き先の判断だけはお願いしています。
06公開当日から1週間でやること
要点:公開当日はフォームとメールの受信を最優先で確認してください。転送設定と解析の数字は、翌日以降に落ち着いて見ます。アクセスの動きが気になる場合は公開後にアクセスが減る原因もあわせてご覧ください。
公開直後は、確認したいことが一度に押し寄せます。優先順位をつけておくと落ち着いて動けます。
- 当日。お問い合わせフォームから実際に送信し、担当者のメールボックスに届くかを確かめます。自動返信も忘れずに。
- 当日〜翌日。主要なページの旧URLをブラウザに入れて、新しいページに着くかを見ます。数が多い場合は上位20ページだけでも構いません。
- 3日目まで。アクセス解析に数字が入っているかを確認します。ゼロのままならタグが入っていません。
- 1週間以内。検索エンジンに新しいサイトマップを知らせ、エラーの報告が出ていないかを見ます。
この期間は、旧サーバーをまだ解約しないでください。1か月ほど並行して残しておけば、抜けが見つかったときに元のデータを取り出せます。解約は落ち着いてからで間に合います。
07準備を始めた時期別|公開後の不具合
要点:移行の準備をいつ始めたかで、公開後の手直しの量が変わりました。設計に入る前から準備した案件と、公開直前に始めた案件では、追加作業の日数に4倍以上の差が出ています。
準備の開始時期ごとに、公開後1か月の状況をまとめました。
| 準備を始めた時期 | 手直しの平均件数 | 追加作業の平均日数 |
|---|---|---|
| 設計に入る前 | 1.2件 | 0.5日 |
| 制作の途中 | 2.4件 | 1.0日 |
| 公開の2週間前 | 4.1件 | 1.5日 |
| 公開の直前 | 6.8件 | 2.5日 |
出典:ZenWeb Japanが手がけたホームページリニューアル案件の集計(日本国内、2019〜2026年上半期)。案件の規模により結果は変わります。
差が生まれる理由は単純です。早く始めた案件では、棚卸しの結果がそのまま設計に反映されます。逆に直前で始めると、すでに出来上がった器に中身を押し込む形になり、入らないものが後から出てきます。
設計より前に棚卸しを終えておくと、ページ構成の検討そのものが速くなります。構成づくりの進め方はワイヤーフレームの作り方にまとめました。
公開が近いのに、準備が進んでいませんか
残りの日数から逆算して、いま何を先に押さえるべきかをお伝えできます。 リニューアルの失敗例と回避策を見る →
08移せないデータと、その手当て
要点:会員のパスワード、過去のアクセス解析の履歴、古い仕組みで作られた検索機能。この3つは、そのままの形では移せません。移せないと分かった時点で、代わりの手当てを決めておいてください。
「全部そのまま移ります」とお伝えできない領域があります。代表的なものを挙げます。
- 会員のパスワード。暗号化されているため、そのまま引き継げません。公開時に再設定のご案内を出す形になります。
- 過去のアクセス解析データ。新しい計測に履歴は入りません。比較したい数字は、公開前にダウンロードして保管してください。
- 古い仕組みの独自機能。長年使ってきた検索機能や予約の仕組みは、作り直しになることがあります。Webシステム開発として別に見積もる場合もあります。
- デザインに埋め込まれた文字。画像の中に書かれた文章は、そのままでは検索対象になりません。移行のついでに文字へ起こすことをおすすめします。
大切なのは、移せないこと自体ではありません。移せないと知らないまま公開日を迎えることです。棚卸しの段階で制作会社に確認すれば、代わりの手当てを考える時間が取れます。改修で済ませるという選択肢もありますので、改修とリニューアルの違いも一度ご覧ください。
09担当体制別|移行準備にかかった日数
要点:移行の準備にかかる日数は、担当者の人数ではなく「決められる人がいるか」で変わりました。兼任1名の体制がいちばん時間を要し、部署をまたぐチームが最も短く済んでいます。体制づくりはリニューアルの社内体制でも扱っています。
社内の担当体制ごとに、棚卸しと素材提出にかかった日数を集計しました。
| 社内の担当体制 | 棚卸し | 素材の提出 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 兼任の担当者1名 | 18日 | 24日 | 42日 |
| 専任の担当者1名 | 9日 | 13日 | 22日 |
| 部署をまたぐチーム | 7日 | 10日 | 17日 |
| 制作会社に一任 | 6日 | 21日 | 27日 |
出典:ZenWeb Japanが手がけたホームページリニューアル案件の集計(日本国内、2019〜2026年上半期)。組織の規模により結果は変わります。
注目していただきたいのは、いちばん下の行です。制作会社に一任した場合、棚卸しは最短で終わります。ところが素材の提出で21日かかっています。各部署の資料や写真は、結局は社内の方にしか集められないためです。
つまり丸投げしても、素材集めの時間は短縮できません。棚卸しは任せていただいて構いませんが、素材を集める窓口だけは社内に置いてください。この一手間が、全体の日数をいちばん短くします。
10移行漏れが見つかったタイミング
要点:移行漏れの半分は公開前に見つかりますが、残りは公開後に出てきます。しかも見つかるのが遅いほど、直すのに時間がかかりました。3か月以降に判明したものは、平均5日以上を要しています。
移行漏れが見つかった時期と、その修正にかかった日数の関係です。
| 見つかった時期 | 全体に占める割合 | 修正の平均日数 |
|---|---|---|
| 公開前の最終確認 | 51% | 0.5日 |
| 公開当日 | 17% | 0.5日 |
| 公開1週間以内 | 14% | 1.0日 |
| 公開1か月以内 | 11% | 2.0日 |
| 公開3か月以降 | 7% | 5.5日 |
出典:ZenWeb Japanが手がけたホームページリニューアル案件の集計(日本国内、2019〜2026年上半期)。内容により結果は変わります。
遅く見つかるほど時間がかかる理由は、元のデータが手元から消えているからです。旧サーバーを解約したあと、古い原稿やPDFを探し回ることになります。3か月以降の修正日数が跳ね上がっているのは、この探す時間が含まれているためです。
総務省の調査でも、ホームページを開設している企業は9割を超えていました(令和6年通信利用動向調査)。長く運用してきたサイトほど蓄積は厚く、あとから探す手間も増えます。バックアップを手元に残す意味は、ここにあります。
公開後に抜けが見つかってお困りですか
公開済みのサイトでも、転送設定やメールの手当ては後からやり直せます。 WordPress制作・保守の内容を見る →
11制作会社に渡しておくもの
要点:最初の打ち合わせで渡していただきたいのは、サーバーとドメインの管理情報、管理画面のログイン、フォームの送信先、解析の権限の4つです。これが揃っていると、見積りの精度も上がります。
移行の作業が止まる原因の多くは、情報がどこにあるか分からないことです。次の4つを先に確認しておいてください。
- サーバーとドメインの契約先。どこと契約し、管理画面に誰が入れるのか。前の担当者しか知らないケースがよくあります。
- ホームページの管理画面。ログインできる方の情報。分からない場合も、その旨をお伝えいただければ調べる方法があります。
- フォームの送信先。いま問い合わせがどのアドレスに届いているか。使われていないアドレスが残っていることもあります。
- アクセス解析の権限。どのアカウントで計測しているか。権限を譲っていただければ、数字の引き継ぎが確実になります。
費用の目安が気になる方はリニューアル費用の内訳を、公開後の運用を自社でされたい方は自社で更新できるようにする方法もあわせてご覧ください。
12まとめ|移行は棚卸しで決まる
要点:ホームページのデータ移行でうまくいく案件に共通しているのは、設計に入る前に棚卸しを終えていることです。移す作業そのものは、決まってさえいれば難しくありません。
この記事の要点を、3つに絞ってまとめます。
- 移行漏れは設定で起きる。本文や画像より、転送設定とメール設定のほうがはるかに漏れます。
- 準備は設計の前に。公開直前に始めた案件では、手直しが数倍に増えました。
- 素材集めの窓口は社内に。棚卸しは任せられますが、資料と写真は社内でしか集められません。
リニューアルは、目的が決まっているほど移行の判断も速くなります。まだ目的が固まっていない段階の方は、リニューアルの目的の決め方から読んでいただくと、この記事の内容が使いやすくなります。時期を検討中でしたらリニューアルのタイミングもご覧ください。
ZenWeb Japanは2000年創業のWeb制作会社です。ホームページ制作から移行作業まで承っており、他社が制作したサイトのお引き受けも可能です。料金は内容に応じた見積り制です。
13よくある質問
要点:過去記事は全部移すのか、ドメインは変えられるのか、旧サーバーはいつ解約してよいのか。よくいただく5つの質問にお答えします。個別の状況はリニューアルの窓口からお気軽にお声がけください。
1. 過去のブログ記事は全部移したほうがよいですか
全部でなくて構いません。アクセスのある記事と、いまも内容が正しい記事だけを移せば十分です。移さない記事のURLは、関連するページへ向けてください。何もせずに消すと、そのページを見に来た方が行き止まりに当たります。
2. ドメインは変えたほうがよいのでしょうか
特別な事情がなければ、そのまま使うことをおすすめします。長く使ったドメインには検索エンジンからの評価が積み上がっており、変えるとその一部を引き継ぐ手間が発生します。社名変更などで変える場合は、転送設定を丁寧に行えば影響を抑えられます。
3. 旧サーバーはいつ解約してよいですか
公開から1か月ほど残しておくと安心です。移行漏れの多くはこの期間に見つかります。ZenWeb Japanの集計でも、公開1か月以内に11%の漏れが判明していました。解約前に、ファイル一式とデータベースを手元にダウンロードしておいてください。
4. 会員機能や商品データも移せますか
形式によります。標準的な仕組みで作られていれば移せることが多い一方、独自に作り込まれている場合は変換作業が必要です。ECサイトの商品データは点数が多いため、事前の確認をおすすめします。ECサイト制作のご相談でも、最初にこの点を確認しています。
5. 移行作業だけを依頼することはできますか
できます。制作は別の会社で進めていて、移行の部分だけお困りというご相談も承っています。現在のサーバーと管理画面を拝見したうえで、対応できる範囲と日数をお伝えします。料金は内容に応じた見積り制です。
データの引き継ぎ、一緒に整理しませんか?
ZenWeb Japanは2000年創業のWeb制作会社です。いまのホームページを拝見すれば、何が移せて何が移せないのか、どこから手をつければよいのかをお伝えします。準備が進んでいない段階でも構いません。
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