01はじめに|この記事でわかること
要点:この記事は、ホームページのリニューアルを任された担当者の方に向けて、目的の決め方と社内合意の作り方をまとめたものです。2000年創業のWeb制作会社ZenWeb Japanが、実際の案件で使っている手順をそのまま公開します。
「そろそろサイトを新しくしよう」と決まったものの、何から手をつければいいのか分からない。そんな状態でこの記事にたどり着いた方は多いと思います。
ここでつまずく理由ははっきりしています。リニューアルは「作る仕事」に見えて、実際は「決める仕事」だからです。デザインをどれにするか、どの情報を残すか、どこにお金をかけるか。制作が始まると、こうした判断が毎週のように出てきます。そのとき基準になるのが目的です。
そしてもう一つ、担当者を悩ませるのが社内です。経営層、営業、人事、情報システム。それぞれが違うものを求めてきて、まとめきれない。この記事では、その調整も含めて次の3つをお伝えします。
- 目的を一文にする手順。「見た目を新しく」で止まらず、判断に使える言葉まで落とし込む4つのステップです。
- 社内合意の作り方。要望を集める前にやるべきことと、部署間の衝突をほどく順番をお伝えします。
- 判断の材料になるデータ。相談で挙がる目的の内訳、書き方の粒度と手直しの関係など、当社の案件記録から4つの角度でまとめました。
本題に入る前に、進め方の全体像を短時間でつかめる動画をご紹介します。
サイトリニューアルで失敗しないための進め方を6STEPで教えます!
出典動画:YouTube
02リニューアルの目的とは?判断の基準になる一文
要点:リニューアルの目的とは、「誰に、何をしてもらうために作り直すのか」を一文で言い切ったものです。スローガンではなく、制作中に迷ったときに立ち返る判断の基準として使います。ホームページリニューアルの成否は、ここの精度でほぼ決まります。
目的という言葉は、社内では二つの意味で使われがちです。一つは「ブランド価値の向上」のような、会議資料に載る大きな言葉。もう一つは「問い合わせフォームまで来てもらう」のような、具体的な行動です。
リニューアルで役に立つのは後者です。理由は単純で、制作中に出てくる判断が、どれも具体的だからです。
「ブランド価値の向上」では、トップページに事例を載せるかどうかを決められません。
使える目的かどうかは、次の3つが入っているかで見分けられます。
- 誰に。「見込み客」ではなく、「同業他社と比較中の、従業員50人規模の製造業の購買担当」まで絞ります。
- 何をしてもらうか。資料請求、電話、来店予約、応募。サイト上で起きてほしい行動を一つ選びます。
- どのくらい。「月8件の問い合わせを、公開から6か月で月15件に」のように、数と期限を入れます。
この3つがそろうと、目的は判断に使えるようになります。「その要素は、比較中の購買担当が資料請求するのに役立ちますか」と一言聞けば、載せるかどうかが決まるからです。
目的の一文、うまく書けていますか?
書きかけのメモを見せていただければ、判断に使える形になっているかその場でお伝えします。 リニューアルの進め方を見る →
03最初に挙がる目的と、実際の主目的のずれ
要点:ご相談の最初に挙がる理由で最も多いのは「デザインが古い」ですが、話を掘り下げると主目的として残るのは2割弱です。見た目は入り口で、その裏に別の課題が隠れています。まずはリニューアルのタイミングとあわせて、本当の理由を探るところから始めてください。
当社にご相談いただいた案件で、最初にお聞きした理由と、打ち合わせを重ねたあとに主目的として残った理由を並べたのが次の表です。
| 最初に挙がった理由 | 挙がった割合 | 主目的として残った割合 | ずれが起きる理由 |
|---|---|---|---|
| デザインが古い | 62% | 18% | 見た目は入り口で、裏に別の課題がある |
| 問い合わせを増やしたい | 41% | 34% | 最後まで残りやすい |
| スマホで見づらい | 38% | 11% | 部分的な改修で足りることがある |
| 自社で更新したい | 33% | 15% | 運用の課題として別に扱える |
| 情報が整理されていない | 29% | 5% | 原稿の入れ替えで解決することがある |
| 採用の応募を増やしたい | 21% | 17% | 採用サイトとして切り出すことが多い |
出典:ZenWeb Japanのリニューアル相談記録の集計(日本国内の発注企業、2021〜2026年上半期)。複数回答のため合計は100%を超えます。業種と企業規模により傾向は変わります。
注目していただきたいのは、「デザインが古い」の62%と18%の差です。掘り下げていくと、実際には「他社と比べたときに見劣りして、商談で不利になっている」「採用の応募者が会社概要だけ見て離れている」といった別の課題が出てきます。
ここを飛ばして見た目だけ直すと、公開後に「きれいにはなったけれど、何も変わらない」という感想になりがちです。リニューアルの失敗例の多くは、この段階で決まっています。
04リニューアルの目的を決める4ステップ
要点:目的は、現状の数字を見る、困っている人を一人決める、行動を一つ選ぶ、数と期限を入れる、の順に決めます。ここまで終わってからワイヤーフレームや構成の話に進むと、後戻りが起きにくくなります。
順番が大事です。いきなり「どんなサイトにしたいか」から考えると、好みの話に流れてしまいます。次の4つを順にたどってください。
- いまの数字を出す。月間のアクセス数、問い合わせ件数、よく見られているページ。Googleアナリティクスとサーチコンソールで30分あれば足ります。詳しい手順はリニューアル前のサイト診断にまとめました。
- 困っている人を一人決める。お客様、応募者、既存の取引先。全員に向けたサイトは、結局誰にも刺さりません。いちばん増やしたい相手を一人だけ選びます。
- してほしい行動を一つ選ぶ。その人にサイト上で何をしてもらいたいか。フォーム送信、電話、資料ダウンロード。二つ以上あるときは、優先度の高いほうを主目的にします。
- 数と期限を入れる。「公開から6か月で、月の問い合わせを8件から15件に」。数字が入ると、公開後に成功か失敗かを判断できます。
4つ目でつまずく方が多いのですが、正確な予測は必要ありません。現状の1.5倍から2倍を仮置きして、公開後に見直せば十分です。数字がないと、公開後に「なんとなく良くなった気がする」で終わってしまいます。
05目的の書き方の粒度と、制作中に止まる回数
要点:目的の書き方が細かいほど、制作中に判断が止まる回数は減ります。数と期限まで書いた案件は1件あたり平均1.4回でしたが、「新しくしたい」だけの案件は7.2回でした。止まる回数は、そのままリニューアルの費用と期間に跳ね返ります。
制作中に「これはどうしますか」と手が止まる場面がどれくらい出たか、目的の書き方別に集計しました。
| 目的の書き方 | 判断が止まった回数 | 公開が遅れた割合 |
|---|---|---|
| 誰に・行動・数・期限まで | 1.4回 | 9% |
| 誰に・行動まで | 2.3回 | 17% |
| 方針が一文だけ | 4.6回 | 38% |
| 「新しくしたい」だけ | 7.2回 | 61% |
出典:ZenWeb Japanのリニューアル案件について、進行中の確認記録を集計(日本国内の発注企業、2021〜2026年上半期)。サイト規模と社内の承認フローにより回数は前後します。
1回止まるたびに、確認と再検討で数日から1週間かかります。7.2回止まれば、単純計算で1か月以上が消えます。目的を丁寧に決める時間は、ここで取り返せます。
06目的があいまいなまま進むと何が起きるか
要点:目的があいまいだと、判断の基準が「声の大きい人の好み」に置き換わります。デザイン案が決まらない、載せる情報が増え続ける、公開後に評価できない。この3つが順番に起こります。SEOの引き継ぎのような技術面の対策も、優先順位が決まらず後回しになりがちです。
「あとで決めればいい」と思われがちですが、実際には決めないまま進むわけではありません。誰かが、別の基準で決めてしまいます。
制作の現場で実際に起きるのは、次のような場面です。
- デザイン案が決まらない。3案のうちどれが良いかを聞かれても、判断の軸がないので「なんとなく好き」で選ぶことになります。そして翌週、別の役員が別の案を推します。
- 載せる情報が増え続ける。削る理由がないので、各部署の要望がそのまま積み上がります。トップページが長くなり、いちばん見せたいものが埋もれます。
- 公開後に評価できない。何を良くするための投資だったかが不明なので、成果を確かめようがありません。次の改善にもつながりません。
3つ目がいちばん痛手です。数百万円をかけた投資が、社内で「よくわからないもの」として記憶されてしまうと、次のリニューアルの予算も通りにくくなります。
07社内合意の作り方|要望を集める前にやること
要点:社内合意は、要望を集めてから絞るのではなく、決裁者と主目的を先に一つ決めてから要望を集めると早くまとまります。順番を逆にするだけで、調整の負担は大きく変わります。リニューアルのご相談でも、この順番を最初にお伝えしています。
多くの現場では、まず全部署にアンケートを配ります。ところが、集まった要望を後から絞ろうとすると、「なぜうちの要望が落ちたのか」という話になり、担当者が板挟みになります。
順番を入れ替えてください。次の3つを、要望を聞く前に済ませます。
- 決裁者を一人に絞る。最終的に「これでいく」と言える人を決めます。合議で決めようとすると、いつまでも決まりません。
- 決裁者と主目的を一文で合意する。この記事の4ステップを、決裁者と1時間の打ち合わせで一緒にたどります。ここで書いた一文が、あとの全ての判断基準になります。
- その一文を添えて要望を聞く。「今回の目的はこれです。この目的に照らして、必要だと思うことを教えてください」と伝えます。制約があるほうが、要望は具体的になります。
この順番だと、要望を落とすときの説明が「担当者の判断」ではなく「合意した目的に照らして今回は外す」になります。角が立ちません。
あわせて用意しておきたいのが、今回やらないことリストです。外した要望を「次回の候補」として残しておくと、要望を出した部署も納得しやすくなります。捨てるのではなく、順番を決めるという伝え方が効きます。
08部署別の要望と、衝突しやすい組み合わせ
要点:衝突が長引きやすいのは、経営層と営業、そして情報システムが絡む場面です。調整に2週間以上かかることもあります。誰と誰がぶつかりやすいかを先に知っておくと、打ち合わせの組み方が変わります。要望は最終的にサイト構成図に落として整理します。
当社が関わった案件で、どの部署からどんな要望が出て、どこで時間がかかったかをまとめました。
| 部署 | よく挙がる要望 | ぶつかりやすい相手 | 調整日数 |
|---|---|---|---|
| 情報システム | 既存システムとの連携・セキュリティ要件 | 進行全般 | 15日 |
| 経営層 | 世界観の刷新・他社より良く見せたい | 営業 | 12日 |
| 営業 | 事例と料金をすぐ見せたい | 経営層 | 12日 |
| 人事・採用 | 社員紹介と募集要項を目立たせたい | 営業 | 8日 |
| 広報 | お知らせを自分たちで更新したい | 情報システム | 6日 |
| 現場(店舗・工場) | 写真の差し替えを自分でやりたい | 情報システム | 5日 |
出典:ZenWeb Japanのリニューアル案件の打ち合わせ記録を集計(日本国内の発注企業、2021〜2026年上半期)。組織の規模と決裁の仕組みにより日数は変わります。
いちばん時間がかかるのは情報システム部門との調整です。ただし、これは要望というより制約に近いものです。だからこそ、要望収集より前に一度声をかけておくと、後から出てくる「それはセキュリティ上できません」を避けられます。
経営層と営業のぶつかり合いは、目的の一文で解けます。「比較中の購買担当に資料請求してもらう」が主目的なら、事例と料金は優先されます。判断が好みの争いではなく、目的への貢献度の話になるからです。
社内の意見がまとまらず、進まなくなっていませんか?
第三者が入るだけで、話が前に進むことがあります。ZenWeb Japanは目的の整理からご一緒します。 リニューアルの支援内容を見る →
09目的を1枚にまとめる|方針シートの作り方
要点:決めた目的は、A4で1枚の方針シートにまとめます。目的の一文、対象者、してほしい行動、目標値、今回やらないこと。この5項目があれば十分です。相見積もりを取るときにも、この1枚をそのまま渡せます。
長い資料はいりません。むしろ1枚に収まらないなら、目的が絞れていない証拠です。載せる項目は次の5つです。
- 目的の一文。「誰に、何をしてもらうか」を1行で。シートのいちばん上に置きます。
- 対象者。いちばん増やしたい相手を、業種・規模・立場まで書きます。
- してほしい行動。フォーム送信、電話、資料請求など、一つに絞ります。
- 目標値と期限。「公開から6か月で月15件」のように、数と時期をセットで。
- 今回やらないこと。出たけれど今回は外す要望を、理由を添えて残しておきます。
この1枚は、社内向けと社外向けの両方で働きます。社内では判断に迷ったときの拠り所になり、社外では制作会社に渡す最初の資料になります。同じ1枚を各社に渡せば、提案の中身を同じ土俵で比べられます。
見積りを比べるときも同じです。金額だけでなく、この目的をどう実現するつもりかで比べてください。見積書の見方とあわせて確認すると、判断がぶれません。
10目的の合意にかけた期間と、公開後の結果
要点:目的の合意に1〜2か月かけた案件が、いちばん良い結果になりました。2週間未満だと公開後の追加費用が膨らみ、2か月を超えると効果は頭打ちになります。かければかけるほど良い、というわけではありません。制作会社選びと並行して進めるのが現実的です。
目的を固めるのにかけた期間ごとに、その後どうなったかを追いかけました。
| 合意にかけた期間 | 制作期間 | 追加費用(初期費用比) | 達成できたと回答 |
|---|---|---|---|
| 2週間未満 | 5.8か月 | 22% | 31% |
| 2〜4週間 | 4.9か月 | 12% | 58% |
| 1〜2か月 | 4.6か月 | 7% | 74% |
| 2か月以上 | 5.4か月 | 6% | 71% |
出典:ZenWeb Japanのリニューアル案件について、公開後6か月時点の実績と担当者アンケートを集計(日本国内の発注企業、2021〜2026年上半期)。サイト規模と業種により差があります。
面白いのは、2か月以上かけても結果がほとんど伸びない点です。制作期間はむしろ長くなっています。議論が長引いた案件では、公開の時期を逃してしまったケースもありました。
目安は1か月です。決裁者との打ち合わせに1時間、要望収集に2週間、整理と合意に2週間。この配分なら、多くの会社で無理なく回せます。
11まとめ|目的が決まればリニューアルは進む
要点:リニューアルの目的は「誰に・何をしてもらうか・どのくらい」の一文にまとめ、決裁者と先に合意してから要望を集めます。方針シート1枚を作れば、社内の判断もリニューアルの発注も同じ基準で進められます。
ここまでの流れを振り返ります。
- 目的は判断の基準。お題目ではなく、制作中に何度も使う道具として書きます。
- 最初の理由は入り口。「デザインが古い」の裏にある課題まで掘り下げてください。
- 順番を逆にする。要望収集より前に、決裁者と主目的を一文で合意します。
- 1枚にまとめる。A4で1枚の方針シートが、社内の拠り所と発注資料を兼ねます。
- 期間は1か月前後。急ぎすぎず、長引かせすぎない配分が結果につながります。
企業のホームページ開設率は93.2%(総務省・令和6年通信利用動向調査)に達しています。持っているのが当たり前になった今、差がつくのは「何のために持っているか」です。その答えを一文にしたものが、今回決める目的です。
ZenWeb Japanは2000年創業のWeb制作会社です。目的の整理からご一緒することも多く、書きかけの状態でご相談いただいて構いません。
12よくある質問
要点:目的の決め方、絞り込み方、社内がまとまらないときの対処、かける期間、相談のタイミング。ご相談でよくいただく5つの質問にお答えします。個別の事情がある場合は、リニューアルの相談窓口からお気軽にお声がけください。
1. ホームページリニューアルの目的はどう決めればいいですか
いまの数字を見る、増やしたい相手を一人決める、してほしい行動を一つ選ぶ、数と期限を入れる。この4つを順にたどると、「誰に・何をしてもらうか」の一文になります。デザインの話は、この4つが終わってからで大丈夫です。
2. リニューアルの目的は複数あってもいいですか
主目的は一つに絞ってください。複数あると、判断が必要な場面でどちらを優先するか決められなくなります。二番目、三番目の目的は「あわせて満たせたら良いこと」として、方針シートの下のほうに書いておく形をおすすめします。
3. 社内で意見がまとまらないときはどうすればいいですか
要望を集める順番を見直してください。先に決裁者と主目的を一文で合意し、その一文を添えて要望を聞くと、話が早くまとまります。それでも進まないときは、制作会社など第三者に入ってもらうと、社内の力関係から離れて議論できます。
4. 目的を決めるのにどのくらい時間をかけるべきですか
1か月前後が目安です。当社の案件では、1〜2か月かけた場合に公開後の満足度が最も高く、追加費用も抑えられていました。2週間未満で急ぐと公開後に跳ね返りやすく、2か月を超えても結果はあまり変わりません。
5. 目的が決まっていない状態で制作会社に相談してもいいですか
問題ありません。むしろ、決まっていない段階での相談を歓迎する会社は多いはずです。当社でも、現状のサイトと社内の状況をうかがいながら、目的の整理からご一緒しています。料金は案件ごとの見積り制で、まずは方向性のご相談だけでも承ります。
リニューアルで目指すこと、一緒に言葉にしませんか?
ZenWeb Japanは2000年創業のWeb制作会社です。現状のサイトと社内の事情をうかがったうえで、目的の一文と方針シートの作り方までお手伝いします。決まっていない段階のご相談で構いません。
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