01はじめに|この記事でわかること
要点: この記事では、ホームページの著作権が誰のものになるのか、契約でどこまで移せるのか、そして移したはずなのに使えないパーツがなぜ出るのかを、制作の現場から順番に整理します。読み終えたら、発注前に確認すべき項目がはっきりします。
「うちが払って作ったサイトなのに、他社では直せないと言われまして」。リニューアルのご相談で、いちばん多いつまずきがこれです。制作会社を替えようとした段階になって、はじめて権利の話が出てきます。
2000年創業のWeb制作会社ZenWeb Japanでは、コーポレートサイトの制作をお受けするとき、着手前にこの話を必ずしています。もめるからではありません。あとで自由に動けるようにするためです。
この記事は条文の順番ではなく、お金を払う側が困る順番で書いています。法律の全体像より、明日の見積書で何を確認するかを優先しました。なお、個別の契約の有効性については、弁護士など専門家にご確認ください。
まず前提となる著作権の基本を、動画で押さえておくと後の話が読みやすくなります。
【著作権の基本】引用・契約書等ビジネスに必要な知識を徹底解説
02ホームページの著作権は誰のもの?結論
要点: 特約がなければ、ホームページの著作権は作った側に残ります。制作費の支払いは、著作権の対価ではなく制作という仕事の対価だからです。発注者に移すには、契約書に譲渡の定めを置く必要があります。
著作権は、作品が生まれた瞬間に自動的に発生します。登録も申請もいりません。文化庁の著作権制度の概要でも、権利を得るための手続きは一切必要ないと説明されています。
ここで多くの方が引っかかります。お金を払った側ではなく、手を動かした側に権利が生まれるのです。しかも制作会社の社員が業務として作った場合は、その会社が著作者になります。
制作費を全額払っても、契約書に一行なければ、著作権は制作会社に残ったままです。
とはいえ、日常の運用が止まるわけではありません。納品されたサイトを公開して使い続けることは、通常の取引の中で当然に想定されています。困るのは、その先に進もうとしたときです。
- 他社に改修を頼みたい。 デザインやコードを作り替える行為は、権利の範囲に触れます。
- サイトの写真を会社案内にも使いたい。 Web用に納品された素材が、印刷物まで含んでいるとは限りません。
- デザインをそのままLPに流用したい。 同じ会社のサイト内でも、用途が変われば別の話になります。
今の契約書、権利のことが書いてありますか?
既存サイトの契約内容を確認したうえで、制作の進め方をご提案します。 ホームページ制作の進め方を見る →
03著作権と著作者人格権|2つの権利の違い
要点: 著作権には、譲渡できる財産的な権利と、譲渡できない著作者人格権の2つがあります。人格権は作った本人に残り続けるため、契約では「行使しない」と約束してもらう形をとります。
文化庁の解説によると、著作者人格権は創作者の精神的な利益を守る権利で、譲渡も相続もできません。一方の財産権は譲渡でき、譲り受けた人が著作権者になります。
ホームページの運用で関係してくるのは、人格権のうち同一性保持権です。作った人の意に反して勝手に改変されない、という権利になります。デザインを大きく変える改修では、ここが問題になり得ます。
そのため実務では、譲渡の条項とセットで「著作者人格権を行使しない」という一文を入れます。制作の見積書を確認するときに、この一文があるかどうかまで見ておくと安心です。
04ホームページは「パーツの集合体」|権利者が分かれる
要点: 1つのホームページの中で、権利者は何人にも分かれています。原稿、写真、イラスト、コード、フォント、テーマ。「サイトの著作権」という一つのかたまりは存在しないと考えたほうが、判断を誤りません。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。多くの解説は「サイトの著作権は制作会社に帰属する」で止まります。ところが現場で止まるのは、たいてい別の場所です。
たとえば御社が原稿を書いたなら、その文章の著作権は御社にあります。写真をストックサイトから買ったなら、権利は撮影者側に残り、御社も制作会社も使わせてもらっている立場です。フリー素材の商用利用で条件を読み違えると、譲渡の話とは無関係にトラブルになります。
構成やレイアウトの考え方そのものは、著作権の対象になりにくい部分です。設計図にあたるワイヤーフレームの作り方を御社側で持っておくと、会社を替えても同じ導線を再現しやすくなります。
05パーツ別|権利の扱いと確認先
要点: 原稿は書いた側、写真は撮影者側、テーマやプラグインは配布元と、パーツごとに確認先が変わります。譲渡契約で動かせるのは制作会社が作った部分だけで、それ以外は別のルールに従います。
| パーツ | 原則の権利者 | 譲渡契約で移せるか | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 原稿・文章 | 書いた側 | 移せる | ライターに外注した分が抜けやすい |
| デザイン・レイアウト | 制作会社 | 移せる | 元データの納品まで書いていない |
| 撮影した写真 | カメラマン | 別途の合意が必要 | Web限定で、印刷物に使えない |
| ストック素材 | 配布元・撮影者 | 移せない | 利用規約の範囲でしか使えない |
| HTML・CSS・独自コード | 制作会社 | 移せる | 共通ライブラリが除外されることがある |
| WordPressテーマ・プラグイン | 配布元 | 移せない | ライセンスの名義と更新が続く |
| Webフォント | フォントベンダー | 移せない | 契約が切れると表示が変わる |
| ロゴマーク | 制作した側 | 移せる | 商標の登録は著作権とは別の手続き |
出典:文化庁「著作権制度の概要」および著作権法の規定をもとに、ZenWeb Japanが制作実務の観点で整理。
表の右端を見ると、譲渡契約で動かせる行と、動かせない行がはっきり分かれます。移せない行は、契約書をどれだけ厚くしても移せません。ここは配布元の規約に従うしかない領域です。
写真の行だけは、御社側で先手を打てます。自社で写真を撮っておくと、権利者が御社になり、印刷物やSNSへの転用も自由になります。
06譲渡と利用許諾|どちらで足りるか
要点: 権利を丸ごと受け取る譲渡と、使ってよい範囲だけ決める利用許諾の2通りがあります。将来の作り替えまで自社で決めたいなら譲渡、公開して運用できれば十分なら許諾でも足ります。
どちらが正しいという話ではありません。費用にも影響します。譲渡を求めれば、制作会社は他案件への転用ができなくなるため、その分が金額に反映されることもあります。
- 譲渡を選ぶ場合。 制作会社を替える可能性がある、素材を他媒体にも広げたい、社内で改修していきたい。この3つのどれかに当てはまるなら譲渡が向いています。
- 利用許諾で足りる場合。 同じ制作会社と長く付き合う前提で、Web上での掲載しか予定がない。この場合は許諾の範囲を明確にすれば十分です。
- どちらでも決めておくこと。 使ってよい媒体、改変してよい範囲、期間の3点です。ここが空欄だと、結局あとで確認が必要になります。
ちなみに、システム開発では請負か準委任かで成果物の扱いが変わります。システム開発の契約形態の違いもあわせて押さえておくと、Web制作の契約書も読みやすくなります。
07既存サイトの契約書|権利の記載はどこまであるか
要点: リニューアルのご相談で契約書を拝見すると、著作権について何も書かれていない例が半数を超えます。書いてある場合も、帰属を一行示すだけで止まっていることがほとんどです。
| 記載の状況 | 構成比 | 目安 |
|---|---|---|
| 契約書そのものがない | 34% | |
| 契約書はあるが著作権の記載なし | 28% | |
| 帰属だけ一行ある | 23% | |
| 人格権の不行使まである | 10% | |
| 27条・28条の特掲まである | 5% |
出典:ZenWeb Japanがリニューアルのご相談時に確認した既存契約書の集計(日本国内、2023〜2026年)。構成比のため合計は100%。
下の2行が薄いことに注目してください。本当に効いてくる条項ほど、書かれていないという結果です。次の章で、この5%が何を意味するのかを見ていきます。
なお、契約書そのものがない34%は、決して珍しい話ではありません。メールのやり取りだけで進んだ案件が該当します。これから発注される方は、ホームページ制作の契約書に入れる条項を先に確認しておくと安心です。
0827条・28条の特掲|書き漏らすと作り替えられない
要点: 「著作権をすべて譲渡する」とだけ書いても、作り替えに関する権利は相手に残ったと推定されます。著作権法61条2項の定めがあるため、27条と28条を名指しで書く必要があります。
ここがホームページの著作権でいちばん見落とされる部分です。著作権法(e-Gov法令検索)の61条2項は、27条と28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、譲渡した側に留保されたものと推定すると定めています。
27条は翻案権、つまり元のものを作り替えて別の作品にする権利です。28条は、そうしてできた二次的著作物を利用する権利になります。リニューアルは、まさにこの作り替えにあたります。
ですから契約書の文言は、次の形が安全です。
- 譲渡の範囲。 「著作権法第27条及び第28条の権利を含むすべての著作権を譲渡する」と明記します。
- 人格権の扱い。 「著作者人格権を行使しない」と続けます。
- 移転の時期。 「制作費の支払い完了時に移転する」と条件を書いておきます。
この3行が揃っていれば、数年後にどの会社へ相談しても話が早く進みます。ホームページリニューアルの見積り段階で、既存契約の確認からご相談いただくことも多い部分です。
09記載漏れで実際に困った場面の内訳
要点: 権利の記載漏れは、訴訟ではなく段取りの遅れとして表面化します。もっとも多いのはデザインの元データを受け取れない場面で、次に多いのが素材を他媒体に使えない場面です。
| 支障の種類 | 起きた割合 | 解決までの目安 |
|---|---|---|
| デザインの元データを受け取れない | 41% | 2〜4週間 |
| 写真や素材を他媒体で使えない | 26% | 1〜3週間 |
| 他社への改修依頼で確認が必要になった | 18% | 3〜6週間 |
| クレジット表記を外せない | 9% | 1〜2週間 |
| 有料テーマの名義を移せない | 6% | 買い直しで即日 |
出典:ZenWeb Japanが2023〜2026年に受けたリニューアル案件のうち、権利の確認が必要になった案件の集計(日本国内)。期間は着手までの遅れの目安。
金額の争いになる例はほとんどありません。困るのは時間です。公開日を決めてから権利の確認が始まると、そのまま数週間ずれます。
公開日から逆算すると、確認は今がちょうどいい時期です。
既存サイトの権利まわりを整理したうえで、リニューアルの進め方をご提案します。 リニューアルの進め方を見る →
10譲渡されても自由に使えないもの
要点: 著作権をすべて譲り受けても、他社から借りているパーツは自由になりません。ストック素材、Webフォント、有料テーマやプラグインは、配布元との契約が続く限りその条件に従います。
「全部譲渡してもらったので大丈夫です」というお返事をいただくことがあります。ところが実際に触ってみると、動かせない部分が残っています。
典型はWebフォントです。ページ表示数や契約年数で課金される方式が多く、契約が終われば表示が置き換わります。サイトの権利とは無関係に、お金を払い続けているから使えているという状態です。
有料テーマやプラグインも同じです。ライセンスキーは購入した会社の名義で、更新が止まればアップデートが受け取れなくなります。WordPressでの制作・保守では、この名義を誰が持つかを引き継ぎ時に必ず確認します。
月々の費用の内訳を把握しておくと、こうした継続契約が見えやすくなります。ホームページ保守費用の相場もあわせてご覧ください。
11年別|著作権のご相談はどう変わったか
要点: ご相談の中身は、この3年で「トラブルが起きてから」から「発注する前に」へと移っています。着手前に確認する会社が増え、事後の相談は年々減っています。
| 年 | 発注前の確認 | リニューアル時 | 支障が出てから |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 18% | 44% | 38% |
| 2024年 | 26% | 45% | 29% |
| 2025年 | 35% | 42% | 23% |
| 2026年上半期 | 43% | 39% | 18% |
出典:ZenWeb Japanに著作権についてご相談をいただいた案件の集計(日本国内、2023年〜2026年6月)。構成比のため各年の合計は100%。
発注前の確認が18%から43%まで伸びました。生成AIで作った画像の扱いや、外部サービスとの連携が増えたことで、先に確かめておこうという動きが定着してきたと受け止めています。
同じ流れは他の法令対応でも起きています。個人情報保護法のWebサイト対応やCookie同意バナーの要否も、公開後ではなく設計段階でのご相談が増えました。
12クレジット表記と、他社サイトの模倣
要点: フッターの制作会社名を外せるかどうかは、法律ではなく契約で決まります。逆に他社サイトを参考にする場合は、構成の考え方までは問題になりにくく、文章やデザインをそのまま写すと問題になります。
「Produced by ○○」の表記は、掲載を条件に制作費を抑えている場合があります。外したいなら、着手前に伝えておくのがいちばん簡単です。あとから交渉すると、追加費用の話になりがちです。
他社サイトを参考にする場面も同じくらいご相談があります。判断の目安は次の3つです。
- 構成や導線の考え方。 ありふれた並べ方であれば、参考にしても問題になりにくい部分です。
- 文章表現。 そのまま写すのは避けます。内容が同じでも、言い回しと説明の順番は変えてください。
- 写真・イラスト・図版。 転載は原則できません。引用の要件を満たすかどうかは、文化庁のここが知りたい著作権が参考になります。
広告表現のほうも、根拠のない優良表示は別の法律に触れます。EC寄りの表記については景品表示法とECサイト表記で扱っています。
13発注前に聞いておく5つの質問
要点: 契約書を法務でチェックする前に、担当者への5つの質問で大半は確かめられます。答えづらそうにする項目があれば、そこが後で問題になる場所です。
- 著作権はどちらに帰属しますか。 譲渡なら、いつの時点で移るのかまで聞きます。
- 27条・28条は含まれますか。 将来の作り替えを自社で決められるかが決まります。
- デザインの元データはもらえますか。 権利とは別に、データの納品範囲を確認します。
- 素材のライセンスはどうなっていますか。 写真とフォントは、Web以外で使えるかまで聞いておきます。
- クレジット表記の条件はありますか。 掲載が必須か、外す場合の条件があるかを確認します。
この5つに即答できる会社は、引き継ぎの想定ができています。ホームページ制作会社の選び方でも触れていますが、答え方そのものが判断材料になります。
14まとめ|確認する順番
要点: 帰属を決め、27条・28条を明記し、人格権の不行使を入れ、素材のライセンスを一覧にし、データの納品範囲を書く。この5ステップで、数年後の選択肢が残ります。
- 帰属を決める。 譲渡か利用許諾かを選び、移転の時期まで書きます。
- 27条・28条を明記する。 「すべての著作権」だけでは足りません。
- 人格権の不行使を入れる。 改変が必要になる場面に備えます。
- 素材のライセンスを一覧にする。 写真、フォント、テーマ、プラグインの名義と更新日を残します。
- データの納品範囲を書く。 デザインの元データとソースコードを、どの形式で受け取るか決めます。
難しい交渉ではありません。着手前の打ち合わせで確認して、契約書に反映してもらうだけです。数年後に会社を替えるとき、この5行が効いてきます。
15よくある質問
要点: ホームページの著作権でご相談の多い5つの質問をまとめました。支払いと権利の関係、27条・28条の扱い、連絡が取れない制作会社への対応、素材の転用、クレジット表記の5点です。
1. 制作費を全額払えば、ホームページの著作権はこちらのものになりますか
いいえ、支払いだけでは移りません。著作権は作った側に自動的に発生し、契約で譲渡すると定めて初めて移転します。支払い完了時に移転すると書いておく形が一般的です。
2. 契約書に「著作権はすべて譲渡する」とあります。これで作り替えできますか
そのままでは不十分です。著作権法61条2項により、27条と28条の権利は特掲がなければ譲渡した側に残ると推定されます。「第27条及び第28条の権利を含む」と明記されているか確認してください。
3. 制作会社と連絡が取れません。他社でリニューアルできますか
ケースによります。まず契約書と発注書を確認し、権利の記載を探してください。記載がない場合は、既存のデザインを引き継がず新しく作り直すほうが、結果的に早く進むことが多くあります。
4. サイトの写真をパンフレットにも使いたいのですが
撮影者やストックサイトの利用条件によります。Web限定で契約している場合、印刷物への転用には追加の許諾が必要です。撮影を依頼する段階で、使う媒体をまとめて伝えておくと手直しがありません。
5. フッターの制作会社名は外せますか
契約次第です。表記の掲載を前提に費用を調整している場合があります。外したい場合は着手前に相談してください。あとからの依頼だと、追加費用が発生することがあります。
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ZenWeb Japanは2000年創業のWeb制作会社です。着手前に著作権の帰属と素材のライセンスを整理し、数年後のリニューアルまで見据えたご提案をします。まずは現状のご相談からお気軽にどうぞ。
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