01はじめに|迷うのは「方法」ではなく「順番」です
要点: ネットショップ開設の方法で止まってしまう原因は、サービスの数ではありません。比べる順番が決まっていないことです。先に「誰に、どう届けるか」を決めれば、候補は自然に2つか3つまで絞れます。
「ネットで売りたいのですが、何から手をつければいいでしょうか」。ご相談でいちばん多い質問です。検索して出てくるサービスの数が多すぎて、比較表を眺めているうちに一日が終わってしまう。よくある話です。
でも、手が止まる理由はサービスの多さではありません。「集客を自分でやるのか、借りるのか」を決めないまま費用だけを見比べているからです。ここが決まらないと、どの表を見ても答えは出ません。
この記事では、選択肢を5つに整理し、費用・期間・向いている場面の順に並べます。書いているのは2000年創業のWeb制作・システム開発会社ZenWeb Japanです。構築そのものについてはECサイト制作サービスのページもあわせてご覧ください。
全体の流れは動画でも確認できます。先に一度見ておくと、このあとの比較が頭に入りやすくなります。
ネットショップ開業のための必須手順6つ
02ネットショップ開設の方法は5つ|まず全体像から
要点: ネットショップ開設の方法は、モール出店、無料カート、有料カート、オープンソース構築、フルスクラッチ開発の5つに整理できます。左にいくほど早くて安く、右にいくほど自由度と初期費用が上がります。この一本の軸で全体をつかんでください。
世の中のサービス名を全部覚える必要はありません。仕組みで分けると、次の5つだけです。
- モール出店。楽天市場やAmazonなど、すでに買い物客が集まっている場所に店を構えます。集客を借りる形です。
- 無料カート。BASEやSTORESのように、初期費用と月額をかけずに始められるサービスです。売れたときに手数料を払います。
- 有料カート。Shopifyやカラーミーショップなど、月額を払って機能とデザインの自由度を上げるサービスです。自社ECの標準形です。
- オープンソース構築。EC-CUBEなどを自社サーバーに入れて作り込みます。制作会社に依頼するのが一般的です。
- フルスクラッチ開発。ゼロから設計します。基幹システムや在庫管理と直結させたい場合の選択肢です。
この5つは優劣の順番ではありません。商品の数、扱う金額、社内でどこまで手を動かせるかで最適解が変わります。年商1億円でも無料カートで十分なことがありますし、月商30万円でもフルスクラッチが正解になる業種もあります。
03データで見る|EC市場は分野ごとに伸び方が違います
要点: 2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円で、前年比5.1%の伸びでした。ただし内訳を見ると、物販は3.70%増、サービスは9.43%増と差があります。自分の商材がどの分野かで、期待できる追い風の強さは変わります。
「EC市場は伸びている」と言われますが、伸び方は一様ではありません。分野で分けて見ると景色が変わります。
| 分野 | 2023年 | 2024年 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 物販系(モノを売る) | 14兆6,760億円 | 15兆2,194億円 | 3.70% |
| サービス系(予約・チケット等) | 7兆5,169億円 | 8兆2,256億円 | 9.43% |
| デジタル系(電子書籍・配信等) | 2兆6,506億円 | 2兆6,776億円 | 1.02% |
| 個人間取引(CtoC-EC) | 2兆4,817億円 | 2兆5,269億円 | 1.82% |
出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果」2025年8月26日公表。
物販系のEC化率は9.78%まで上がりました(同調査)。100円の買い物のうち、10円弱がネット経由という水準です。逆に言えば、9割はまだ店頭で動いています。ネットを「主戦場」にするのか「もう一つの窓口」にするのかで、かける費用の判断も変わります。
うちの商材はどの方法が向いているでしょうか。
扱う商品と想定の受注件数をうかがえば、候補を2つまで絞ってお伝えできます。 ECサイト制作の内容を見る →
04選択肢①モール出店|集客を借りて、手数料で払う
要点: モール出店は、楽天市場やAmazonといった買い物客の集まる場所に店を出す方法です。最初から人が来るのが最大の利点で、その対価が出店料と販売手数料になります。集客に時間をかけられない場合の現実的な入口です。
モールの強みは、一言でいえば「もう人がいる」ことです。自社サイトを立ち上げた直後は誰も来ませんが、モールなら検索窓に商品名を入れた人が初日から流れてきます。
一方で、コストは売上に比例して重くなります。出店料に加えて販売手数料、広告費、ポイント原資が乗ります。利益率の低い商材ほど、モールの手数料は利益を大きく削ります。粗利30%を切る商品なら、手数料を引いた後に何が残るかを先に計算してください。
見落とされがちなのが、顧客情報の扱いです。誰が買ったかはモール側の資産で、自由にメールを送ることはできません。リピートを自分で育てたい場合、この制約が後から重くのしかかります。自社ECとの違いは自社ECとモール出店の違いで詳しく整理しています。
05選択肢②無料カート|ネットショップ始め方の入口
要点: 無料カートは、初期費用と月額をかけずに自分の店を持てるサービスです。ネットショップ始め方としてはいちばん手前にあり、商品が売れるかどうかを試すのに向いています。売れ始めると手数料の重さが気になってきます。
BASEやSTORESに代表されるサービスです。申し込んで商品を登録すれば、その日のうちに公開できます。まず反応を見たい段階には最適です。
注意したいのは、無料が「入口だけ無料」だという点です。売れたときの手数料は有料プランより高いのが一般的で、月商が一定を超えると有料プランのほうが安くなります。損益が逆転する地点を、始めた時点で一度計算しておいてください。
デザインや機能の自由度にも上限があります。会員ランクごとの価格設定、複雑な送料計算、外部システムとの連携。このあたりが必要になったときが、次の段階へ移るサインです。
06データで見る|商材によってネットで売れる比率は10倍以上違う
要点: EC化率は商材で大きく開きます。書籍・映像は56.45%、生活家電は43.03%に達する一方、食品・飲料は4.52%、自動車関連は4.16%です。同じ「ネットで売る」でも、追い風の強さは10倍以上違います。
どの方法を選ぶかの前に、商材そのものがネットと相性がよいかを確かめておきたいところです。
| カテゴリ | EC化率 | 水準(目安) | 市場規模 |
|---|---|---|---|
| 書籍、映像・音楽ソフト | 56.45% | ████████████ | 1兆8,708億円 |
| 生活家電、AV機器、PC等 | 43.03% | █████████ | 2兆7,443億円 |
| 生活雑貨、家具、インテリア | 32.58% | ███████ | 2兆5,616億円 |
| 衣類・服装雑貨等 | 23.38% | █████ | 2兆7,980億円 |
| 化粧品、医薬品 | 8.82% | ██ | 1兆150億円 |
| 食品、飲料、酒類 | 4.52% | █ | 3兆1,163億円 |
| 自動車、自動二輪車、パーツ等 | 4.16% | █ | 3,336億円 |
出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果」2025年8月26日公表。棒表示は各カテゴリのEC化率を視覚化したものです。
おもしろいのは、市場規模とEC化率が一致しないことです。食品は3兆円を超えて物販系で最大なのに、EC化率は4.52%しかありません。まだネット化していない大きな市場という読み方もできます。
EC化率が低い分野は「売れない分野」ではありません。競合がまだ少ない分野でもあります。
07選択肢③有料カート|自社ECの標準形
要点: 有料カートは月額を払う代わりに、決済手数料が下がり、デザインと機能の自由度が上がるサービスです。Shopifyやカラーミーショップが代表例で、月商が数十万円を超えたあたりから無料プランより有利になります。
いちばん採用例が多い形です。独自ドメインを使えて、デザインも自由に組めます。定期購入、多言語、在庫連携なども拡張機能で足していけます。
制作会社に依頼する場合も、この層が中心です。ゼロから作らず、土台のあるサービスの上でデザインと導線を設計するので、費用と期間を抑えやすいからです。ShopifyとEC-CUBEの選び分けはShopifyとEC-CUBEの比較で扱っています。
気をつけたいのは、拡張機能の積み上がりです。1つ月額2,000円のアプリを5つ入れれば、月額1万円が上乗せされます。入れる前に、その機能が生む売上を一度見積もってください。必要な機能の一覧はECサイトに必要な機能一覧にまとめています。
08選択肢④オープンソース構築と⑤フルスクラッチ開発
要点: オープンソース構築は、EC-CUBEなどの土台を自社サーバーに置いて作り込む方法です。フルスクラッチはゼロから設計します。どちらも初期費用は上がりますが、基幹システムや独自の受注ルールに合わせられます。
この2つは、カートサービスの標準機能では業務が回らない場合の選択肢です。判断の分かれ目は、次の3つのどれかに当てはまるかどうかです。
- 既存の基幹システムと直結させたい。在庫・受注・会計を二重入力せずに回したい場合です。
- 取引条件が顧客ごとに違う。BtoBの掛売り、得意先別価格、承認フローなどが絡むケースです。
- データを自社で持ちたい。サービス側の仕様変更に業務を左右されたくない場合です。
どれにも当てはまらないなら、有料カートで足ります。逆に当てはまる場合は、無理にカートで組むと運用が破綻します。判断の考え方はExcel業務をWebシステム化すべき5つのサインとも重なります。
09データで見る|5つの方法を費用と公開までの期間で並べる
要点: 無料カートは当日から数日で公開できますが、フルスクラッチは半年前後かかります。初期費用は0円から1,000万円超まで開きます。急ぐほど選べる幅は狭く、作り込むほど時間が必要になります。
ZenWeb Japanがご相談を受けた案件をもとに、5つの方法を同じ物差しで並べました。
| 方法 | 初期費用の目安 | 継続コストの性質 | 公開まで |
|---|---|---|---|
| ①モール出店 | 0〜30万円 | 出店料+売上連動の手数料 | 2週間〜2か月 |
| ②無料カート | 0円〜 | 売れたときのみ手数料 | 当日〜1週間 |
| ③有料カート | 30〜200万円 | 月額+決済手数料+拡張機能 | 1〜3か月 |
| ④オープンソース構築 | 150〜600万円 | サーバー+メンテナンス+改修 | 3〜6か月 |
| ⑤フルスクラッチ開発 | 500万円〜 | サーバー+メンテナンス+機能追加 | 6か月〜 |
出典:ZenWeb Japanのクライアント案件データ(日本国内、2024〜2026年)に基づく目安。実際の金額は要件により変動します。
費用の考え方をもう少し詳しく知りたい場合は、ECサイト構築費用の内訳と相場を先にご覧ください。サイト全般の相場観はホームページ制作の費用相場にまとめています。
この表のどこに当てはまるか、一緒に確かめませんか。
商品数と希望の公開時期をうかがえば、費用と期間の幅をその場でお出しできます。 見積り・ご相談はこちら →
10個人EC開業で必要な手続きと、開設に必要なもの
要点: 個人EC開業でまず必要なのは、開業届、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、そして商材によっては許認可です。開設に必要なものは書類だけではなく、商品写真と説明文の準備が実務では時間を取ります。
手続きは思ったほど多くありません。ただし、抜けると公開後に止まるものが混ざっています。
- 開業届。個人事業として継続的に売るなら、税務署に提出します。国税庁の案内に様式があります。
- 特定商取引法に基づく表記。事業者名、住所、連絡先、返品条件などの掲載が求められます。消費者庁「インターネットで通信販売を行う場合のルール」が一次情報です。
- プライバシーポリシー。個人情報の取得と利用目的を明示します。
- 許認可。中古品なら古物商許可、酒類なら通信販売酒類小売業免許、食品なら営業許可が必要になります。
実務でいちばん時間がかかるのは、書類ではありません。商品写真と説明文です。20点扱うなら、撮影と原稿だけで数週間かかることも珍しくありません。ここを甘く見ると、サイトはできたのに公開できない状態になります。
11EC出店手順|公開までの8ステップ
要点: EC出店手順は8段階です。売り方を決める、方法を選ぶ、届出を出す、決済を申し込む、商品を用意する、サイトを組む、テスト注文をする、公開する。決済の審査に時間がかかるため、早めに動かすのがコツです。
ネットショップを公開するまでの進め方
順番を守ると、待ち時間で止まる場面が減ります。
- 売り方を決める。誰に、どのくらいの単価で、月に何件売りたいのかを紙に書きます。ここが全部の前提になります。
- 方法を選ぶ。5つの選択肢から2つに絞り、費用と期間で比べます。
- 届出と表記を用意する。開業届、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシーを準備します。
- 決済を申し込む。審査に1〜3週間かかることがあります。ここが最も待たされる工程なので、先に出します。
- 商品情報を作る。写真、価格、説明文、送料の設定をそろえます。
- サイトを組む。デザイン、カテゴリ、購入までの導線を作ります。
- テスト注文をする。自分で買って、決済とメールと配送伝票まで一通り通します。
- 公開する。公開後1週間は注文の流れを毎日確認してください。
決済まわりの選び方はECサイトの決済方法の選び方で詳しく扱っています。
12データで見る|開設1年目に毎月かかる手間
要点: 開設後にかかる作業は、受注処理、商品登録、問い合わせ対応、コンテンツ更新の4つが中心です。月商50万円規模でも、合計で月20時間前後は必要になります。この時間を確保できるかが、続くかどうかを分けます。
作って終わりにならないよう、開設後に何が発生するかも先に見ておきます。
| 作業内容 | 月商20万円規模 | 月商50万円規模 | 月商150万円規模 |
|---|---|---|---|
| 受注処理・発送手配 | 3時間 | 8時間 | 25時間 |
| 商品登録・在庫更新 | 4時間 | 6時間 | 10時間 |
| 問い合わせ・返品対応 | 2時間 | 4時間 | 12時間 |
| ページ更新・お知らせ | 2時間 | 3時間 | 5時間 |
| 合計 | 約11時間 | 約21時間 | 約52時間 |
出典:ZenWeb Japanのクライアント案件データ(日本国内、2024〜2026年)に基づく目安。商材と発送形態により変動します。
月商が3倍になると、作業時間はほぼ5倍です。人が増えないまま売上だけ伸びると、この段階で現場が止まります。自動化の判断は、月商150万円より手前で必要になります。売れない場合の原因整理はネットショップが売れない原因と改善方法にまとめました。
13選び方|3つの質問で候補を絞る
要点: 集客を自分でやるか、既存の業務システムとつなぐか、いつまでに公開したいか。この3つに答えるだけで、5つの選択肢は2つ以下に絞れます。費用の比較はそのあとで十分です。
比較表を眺める前に、次の3つに答えてみてください。
- 集客は自分でやりますか。やらない、やれる人がいない場合はモール出店が現実的です。やるなら自社ECを選べます。
- 既存のシステムとつなぐ必要はありますか。あるならオープンソース構築かフルスクラッチ、ないならカートで足ります。
- いつまでに公開しますか。1か月以内なら無料カートかモール、3か月あるなら有料カートも選べます。
3つの答えが出たら、候補はほぼ決まります。迷いが残る場合は、いちばん軽い方法で一度売ってみて、注文数を見てから作り込む順番でも構いません。
14まとめ|ネットショップ開設の方法は売り方から逆算する
要点: ネットショップ開設の方法は5つあり、正解は商材と体制で変わります。集客の担い手、システム連携の有無、公開時期。この3つを先に決めれば、費用の比較は最後の確認作業で済みます。
お伝えしたことを、もう一度並べます。
- 選択肢はモール出店、無料カート、有料カート、オープンソース構築、フルスクラッチ開発の5つです。
- EC化率は商材で10倍以上違います。市場全体ではなく、自分のカテゴリの数字で判断してください。
- 公開までの期間は当日から半年まで開きます。日程が決まっているなら、そこから逆算します。
- 決済の審査が最も待たされます。手順の4番目で必ず先に申し込んでください。
- 開設後は月20時間前後の作業が発生します。担当者の時間を先に確保しておいてください。
ZenWeb Japanは2000年創業、PNHグループの一員としてホームページ制作とWebシステム開発を手がけてきました。詳しくは会社概要とWeb制作ブログをご覧ください。
15よくある質問
1. まったくの初心者でも自分で開設できますか
できます。無料カートなら、商品写真と説明文が用意できていれば当日中に公開できます。つまずきやすいのは技術ではなく、送料設定と返品条件の決め方です。この2つを先に紙に書き出しておくと、作業が止まりません。
2. モールと自社ECは、どちらから始めるべきですか
売れる商品かどうかが分からない段階では、集客のあるモールか無料カートから始めるほうが安全です。反応を確認してから自社ECに投資すると、無駄な費用を抑えられます。両方を並行して運用する会社も少なくありません。
3. 開設に必要なものを最低限そろえると何になりますか
商品、写真、説明文、価格、送料の設定、決済手段、そして特定商取引法に基づく表記です。この7つがあれば公開はできます。開業届は事業として続ける場合に提出します。商材によっては許認可が別途必要になります。
4. 個人でも法人と同じように販売できますか
できます。個人EC開業でも、モール出店や各種カートサービスは利用できます。ただしモールによっては法人のみ、あるいは追加書類が必要な場合があります。申し込み前に出店条件を確認してください。
5. 制作会社に依頼する場合、どの段階で相談すればよいですか
方法を選ぶ前がおすすめです。サービスを決めてから相談すると、その枠内でしか提案ができません。売りたい商品と目標の件数が決まっていれば、そこから逆算して方法を一緒に選べます。当社でも、この段階からのご相談を多くいただきます。