01はじめに|この記事でわかること
要点:この記事では、オフショア開発の費用を「国別の人月単価」「職種別の単価」「単価以外にかかる費用」の3層に分けて整理します。オフショア開発の基本をひととおり理解した方が、次に予算を組むための記事です。
「オフショアにすると半額になる」。よく聞く話ですが、実際に見積りを取ってみると、思ったほど安くならなかった。そんな経験はありませんか。
理由ははっきりしています。多くの記事が伝えているのはエンジニアの人月単価だけで、日本側で発生する工数が入っていないからです。単価が安くても、仕様のすり合わせに時間がかかれば総額はふくらみます。
そこでこの記事では、2000年創業のWeb制作・システム開発会社ZenWeb Japanが、実際に見積りを組んでいる立場から、費用の内訳を数字で分解していきます。読み終えるころには、届いた見積書のどこを見ればいいかがわかります。
本題に入る前に、費用の考え方がつかめる動画をご紹介します。
【システム開発Q&A】オフショア開発編~メリットはコスト削減だけではない?~
出典動画:YouTube
02オフショア開発の費用は何で決まる?
要点:オフショア開発の費用は「人月単価 × 工数(人月)」で決まります。単価は委託先の国と担当者の役割で、工数は仕様の固まり具合で変わります。仕様が曖昧なまま発注すると、単価が安くても工数がふくらみ、結果として高くつきます。
システム開発の見積りは、どこでも同じ式で組み立てます。「1人が1か月働く費用(人月単価)」に「必要な人数×月数(工数)」を掛けるだけです(見積もりの見方)。変わるのは、掛け算の左と右がそれぞれ何で動くかです。
- 人月単価を動かす要因。委託先の国、担当者の役割(プログラマーかブリッジSEか)、扱う技術の難易度、都市(首都圏か地方都市か)。
- 工数を動かす要因。仕様の固まり具合、画面数と機能数、既存システムとの連携の有無、テストの範囲、レビューの回数。
見落とされがちなのは、工数のほうが総額に効くという点です。単価を1割下げても総額は1割しか下がりませんが、手直しで工数が3割増えれば総額は3割上がります。要件定義に時間をかけたほうが安くなるのは、このためです。
自社の案件だと、いくらくらいになりますか?
ZenWeb Japanは日本人窓口とベトナム開発チームの体制で、要件の整理から一緒に進めます。 オフショア開発の進め方を見る →
03国別の人月単価相場|2026年の水準
要点:2026年の主要委託先の人月単価は、エンジニアで月20万〜75万円の幅に収まります。ベトナムは35万〜60万円で中位。ミャンマーなどはさらに安いものの、日本語対応や体制の面で選択肢は限られます。国ごとの詳細はオフショア開発の国別比較で扱っています。
まず全体像から見ていきます。下の表は、公開されている各社の単価表とZenWeb Japanが実務で扱っている見積り水準をならした、2026年8月時点の目安です。
| 委託先 | エンジニア(月額) | ブリッジSE・PM(月額) | 主に評価されている点 |
|---|---|---|---|
| ベトナム | 35万〜60万円 | 55万〜85万円 | 日本語人材の多さ・時差2時間 |
| フィリピン | 30万〜55万円 | 50万〜75万円 | 英語対応・BPOとの組み合わせ |
| インド | 40万〜70万円 | 60万〜90万円 | 先端技術・大規模開発 |
| 中国 | 45万〜75万円 | 65万〜95万円 | 技術力・日本語人材の層 |
| ミャンマー・バングラデシュ | 20万〜40万円 | 40万〜60万円 | 単価の低さ(体制は限定的) |
| 日本国内 | 80万〜120万円 | 100万〜150万円 | 意思疎通の速さ・商習慣の共有 |
出典:ZenWeb Japanが公開単価と自社の見積り実務をもとに整理した参考値、2026年8月時点。
目を引くのは単価の幅の広さです。ベトナムひとつ取っても最安と最高で2倍近い開きがあり、「ベトナムだから月40万円」という決めつけは通用しません。
ブリッジSEやPMの単価は、エンジニアの1.4〜1.5倍です。日本語の仕様を現地に橋渡しし、品質を担保する役割だからです。
04職種で単価は倍近く変わる
要点:同じベトナムでも、テスターは月25万円台、プロジェクトマネージャーは月90万円近くになります。見積書の合計だけを見ていると、この構成比の違いに気づけません。安い見積りは、単価が安いのではなく高い役割が抜けているだけ、という場合があります。
見積書に「エンジニア3名 × 6か月」とだけ書かれていたら、その3名の内訳を必ず確認してください。プログラマー3名と、ブリッジSE1名+プログラマー2名では、総額も進み方もまるで違います。役割ごとの月額目安を並べると、次のようになります。
| 役割 | 月額単価の目安 | 水準(上限値の比較) |
|---|---|---|
| テスター・QA | 25万〜40万円 | |
| プログラマー(若手) | 30万〜45万円 | |
| プログラマー(中堅) | 40万〜55万円 | |
| システムエンジニア | 45万〜65万円 | |
| ブリッジSE | 55万〜80万円 | |
| プロジェクトマネージャー | 65万〜90万円 |
出典:ZenWeb Japanの見積り実務にもとづく目安、2026年8月時点。バーは上限値の相対比較。
テスターとPMでは3倍以上の開きがあります。つまり、体制表を見ないまま総額だけを比べるのは、中身のわからない箱の値段を比べるのと同じです。
安い見積りの多くは、単価が安いのではなく、高い役割が体制から抜けています。
05見積書に出てこない4つの費用
要点:費用でつまずくのは、たいてい見積書の外側です。日本側の仕様調整、受入テスト、為替の変動、契約終了後のメンテナンス。この4つは相手の見積書には載りませんが、確実に発生します。予算に組み込んでおいてください。
委託先から届く見積書は、あくまで「向こうが動く分」の金額です。抜けやすいのは次の4つです。
- 日本側の仕様調整の工数。画面の意図や業務ルールを言語化し、質問に答え、決裁を取る時間です。担当者が週に何時間使うかを見積もっておいてください。
- 受入テストと検収の工数。納品物を業務目線で確認する作業は、委託先には任せられません。開発工数の5〜10%程度は見ておくと安全です。
- 為替の変動。ドル建てや現地通貨建ての契約では、円安が進むと円換算の支払額が増えます。長期案件ほど影響が出ます。
- 契約終了後のメンテナンス。リリースして終わりではありません。障害対応や小さな改修を誰が担うのか、月いくらかを最初に決めておいてください。
この4つを入れずに予算を組むと、あとから追加請求が来たように感じます。オフショア開発の失敗事例を見ても、金額でもめる原因の多くはここに集まっています。
061,000万円の案件で見る費用の内訳
要点:総額1,000万円の業務システムをオフショアで作る場合、純粋な開発工数は450万円前後にとどまります。残りはブリッジSE・PM、テスト、日本側の要件定義と検収、そして予備費です。開発以外に半分以上かかる、という前提で予算を組んでください。
金額に落としてみます。画面数20前後の業務システムを、ベトナムのチームで6か月かけて作るケースの内訳です。
| 負担側 | 項目 | 構成比 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| オフショア側 | 開発工数(実装) | 45% | 450万円 |
| ブリッジSE・PM | 20% | 200万円 | |
| テスト・QA | 10% | 100万円 | |
| 日本側 | 要件定義・仕様調整 | 15% | 150万円 |
| 受入テスト・検収 | 5% | 50万円 | |
| 共通 | 手直し・予備費 | 5% | 50万円 |
出典:ZenWeb Japanの案件経験をもとにした構成比の目安、2026年8月時点。案件により変動します。
実装が45%。ここが「安くなる部分」です。逆に言えば、残りの55%は国内でもオフショアでもあまり変わりません。総額が半分にならない理由は、この構成にあります。国内でまるごと発注した場合の相場感はシステム開発の費用相場で整理しているので、見比べてみてください。
この内訳、自社の案件に当てはめてみませんか?
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07どの規模から費用差が出るのか
要点:オフショア開発の費用メリットが出るのは、おおむね総額500万円以上、期間3か月以上の案件からです。それより小さい案件では、体制を立ち上げる手間が節約分を上回ります。単発の小改修なら、国内で頼んだほうが安く済みます。
オフショアには、開発が始まる前の固定的な負担があります。チーム編成、開発環境の共有、仕様書の整備、ルール決め。この初期負担は案件が小さくてもほぼ同じだけかかるため、規模が小さいほど不利になります。
- 総額200万円未満・1〜2か月。立ち上げの手間が節約分を食います。国内で完結させたほうが早く安く終わります。
- 総額200万〜500万円・2〜3か月。ほぼ互角です。継続の予定があるなら、この規模で試す価値はあります。
- 総額500万〜2,000万円・3〜12か月。差がはっきり出ます。オフショアがもっとも効く帯です。
- 総額2,000万円超・1年以上。差は大きくなる一方、体制の維持と引き継ぎの設計が成否を分けます。
この判断軸は、外に出すか自社で持つかという議論とも重なります。システム開発の外注と内製の比較もあわせてご覧ください。
08単価差はこの5年で縮んでいる
要点:2020年には国内とベトナムの単価差は約2.5倍ありましたが、2026年には1.8倍程度まで縮んでいます。現地の賃金上昇と円安が同時に進んだためです。「3分の1で作れる」という前提で予算を組むと、確実に足りなくなります。
現地の人件費は着実に上がっています。ジェトロのアジアの給与水準に関する分析によれば、ベトナムの製造業作業員の月額基本給(平均値)は2013年の162ドルから2023年には273ドルへ、10年で68.5%上昇しました。IT職とは別の統計ですが、賃金が上向く流れは同じです。
| 年 | 国内エンジニア(月額目安) | ベトナム(月額目安) | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 75万円 | 30万円 | 約2.5倍 |
| 2022年 | 78万円 | 34万円 | 約2.3倍 |
| 2024年 | 82万円 | 42万円 | 約2.0倍 |
| 2026年 | 88万円 | 48万円 | 約1.8倍 |
出典:ZenWeb Japanが公開単価と自社の見積り実績から整理した中位水準の目安、2026年8月時点。
一方、国内の単価も上がっています。経済産業省のIT人材需給に関する調査では、中位シナリオで2030年に約45万人のIT人材が不足すると試算されています。人手が足りない以上、国内単価が下がる要素は見当たりません。
倍率は縮んでも、絶対額の差は残ります。ベトナムが選ばれ続ける背景はベトナムオフショア開発の強みで詳しく扱っています。
09契約形態で総額は変わる
要点:同じ開発でも、請負・ラボ型・準委任のどれを選ぶかで支払い方も総額も変わります。仕様が固まっているなら請負、変わり続けるならラボ型が向きます。仕様が動く案件を請負で契約すると、変更のたびに追加見積りが発生します。
契約形態は、費用の「決まり方」を決めるものです。3つの違いを整理します。
- 請負契約。成果物と金額を先に確定します。予算は読みやすい反面、仕様変更は追加費用になります。要件が固まった案件向きです。
- ラボ型(オフショア開発センター)。月額でチームを確保し、その中で開発を進めます。仕様変更に強く、継続案件向きです。詳しくはラボ型開発の解説をご覧ください。
- 準委任契約。作業時間に対して支払います。調査や試作など、ゴールが動く工程向きです。
実務でよく見るのは、要件定義を準委任で行い、確定後に請負へ切り替える形です。どちらが安いかは、仕様がどれだけ動くかで決まります。
10安く抑えようとして高くつく3つのパターン
要点:費用を削るときに手をつけてはいけない場所があります。ブリッジSE、テスト、要件定義の3つです。どれも「作らない部分」なので削りやすく見えますが、削ると手直しが増え、結果的に総額が上がります。
予算が厳しいとき、まず削られるのはこの3つです。順に見ていきます。
- ブリッジSEを外す。月60万円が浮きます。ただし日本語の仕様が現地に正しく届かず、認識のズレが実装後に発覚します。作り直しの工数は、浮いた金額をたやすく超えます。
- テスト工程を圧縮する。納期が近いほど削りたくなります。しかし不具合はリリース後に見つかり、運用しながらの修正になります。修正の単価は開発時より高くつきます。
- 要件定義を省略する。「作りながら決めよう」がいちばん高くつきます。画面ができてから仕様が変わると、設計まで戻ることになります。
共通しているのは、削った分がそのまま後工程の手直しに変わることです。削るなら機能の数そのものを減らしてください。第1段階で本当に必要な機能だけを作り、様子を見て足す。この進め方のほうが確実に総額は下がります。
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11見積りを比較する5つのチェック
要点:複数社から見積りを取ったら、合計金額の前に体制表・工程範囲・前提条件を突き合わせてください。金額差の大半は、含まれている範囲の違いです。前提がそろって初めて、金額の比較に意味が出ます。
前提をそろえる近道は、依頼内容を文書で渡すことです(RFPの書き方)。確認する項目は次の5つです。
- 体制表。誰が何名、何か月入るのか。ブリッジSEとPMの記載を最初に見てください。
- 工程の範囲。要件定義から入るのか、設計書を渡す前提なのか。テストはどこまで含むのか。
- 前提条件。画面数、想定ユーザー数、対応ブラウザ、連携先。記載が薄い見積りは、あとで追加が出ます。
- 変更時の扱い。仕様変更が起きたときの単価と手続き。契約書の記載を確認してください。
- 納品後のメンテナンス。メンテナンスの月額と対応範囲。未定のまま契約すると、リリース後に交渉が始まります。
この5点を各社に同じ質問として投げると、答えの精度で実力も見えてきます。曖昧な返事が返る会社は、進行中も曖昧です。オフショア開発会社の選び方も参考にしてください。
12まとめ|単価ではなく総額で選ぶ
要点:開発費用は単価だけ見ても判断できません。体制、工程範囲、日本側の工数、メンテナンスまで含めた総額で比べてください。単価差が縮んだ2026年は、「安いから」ではなく「続けられるから」で選ぶ年です。
この記事で見てきた要点を、もう一度整理します。
- 単価はエンジニアで月30万〜60万円が中心。国内との差は1.8倍程度まで縮みました。
- 同じ国でも役割で単価は3倍以上開きます。合計金額ではなく体制表から読んでください。
- 総額に占める実装工程は45%前後。残りは国内に頼んでもほぼ変わりません。
- 費用メリットが出るのは総額500万円・期間3か月から。それ以下なら国内発注が合理的です。
- 削るなら体制ではなく機能数。ブリッジSE・テスト・要件定義は削ると総額が上がります。
単価の安い会社を探すより、工数を暴れさせない体制を選ぶこと。それが費用を抑えるいちばん確実な方法です。
13よくある質問
要点:費用についてご相談でよくいただく5つの質問にお答えします。最低予算、国内との差、追加費用、為替、メンテナンス費まで、契約前に確認しておきたい点をまとめました。
1. オフショア開発の費用は最低いくらから依頼できますか?
総額200万円前後が現実的な下限です。それ以下だと、チーム編成や仕様の受け渡しの手間が節約分を上回ります。継続の予定があるなら、300万〜500万円規模の第1段階から始める進め方をおすすめします。
2. 国内発注と比べて、どのくらい安くなりますか?
実装工程だけを見れば4〜5割ほど下がります。ただし総額では2〜3割の削減にとどまるのが一般的です。要件定義や受入テストなど、日本側で発生する工数は変わらないためです。
3. 見積り後に追加費用が発生することはありますか?
仕様変更があれば発生します。防ぐには、契約前に変更時の単価と手続きを書面で決めておくことです。画面数や連携先といった前提条件も、見積書に明記してもらってください。
4. 為替が動いた場合、費用はどうなりますか?
ドル建てや現地通貨建ての契約では、円安が進むと円換算の支払額が増えます。長期案件では、円建て契約にするか、為替変動時の取り扱いを契約書に定めておくと安心です。
5. メンテナンス費用はどのくらい見ておけばいいですか?
開発費の年15%前後が一つの目安です。障害対応だけか、小さな改修も含むかで金額は変わります。契約範囲と月額を、開発の契約時にあわせて決めておいてください。
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