01はじめに|この記事でわかること
要点:ニアショアとオフショアを、費用・体制・発注側の負担という3つの軸で並べて比べます。海外委託そのものが初めてでしたら、先にオフショア開発の基本をご覧いただくと、この記事の内容がつかみやすくなります。
「海外は不安だから、まずは国内のニアショアで」。開発の委託先を探されている方から、よくうかがう言葉です。
お気持ちはよくわかります。ただ、実際に両方の案件を動かしてみると、この選び方だけでは足りない場面が出てきます。ニアショアでも仕様の認識はずれますし、オフショアでも日本語だけで完結する体制はつくれます。安心かどうかは、距離ではなく体制で決まるからです。
そこでこの記事では、2000年創業のWeb制作・システム開発会社ZenWeb Japanが、実際の案件で見てきた数字をもとに両者を並べます。どちらが優れているかではなく、どういう案件でどちらに寄せると失敗しにくいかを整理しました。
まずは両者の全体像を、動画で押さえておきましょう。
最近流行りのオフショア開発・ニアショア開発についてわかりやすく解説!
出典動画:YouTube
02ニアショアとオフショアの違いを一言でいうと
要点:ニアショアは国内の地方拠点へ、オフショアは海外へ開発を委託する方法です。ただ、両者を分ける本当の差は場所ではなく、単価と、1つの案件に何人集められるかにあります。ベトナムオフショア開発の体制を検討されるときも、この2点から見てください。
言葉の定義そのものは単純です。ニアショア開発は、札幌・仙台・福岡・沖縄といった国内の地方拠点に開発を任せる方法を指します。オフショア開発は、ベトナムやフィリピンなど海外の拠点に任せる方法です。
ここまでは、どの解説を読んでも同じことが書いてあります。問題は、その先です。
多くの比較記事は「ニアショアは安心、オフショアは安い」で終わります。ただ、この整理で選ぶと、たいてい期待とずれます。国内でも認識のずれは起きますし、海外でも日本人窓口を挟めば日本語だけで進みます。安心と価格という2軸では、判断に足りないのです。
選ぶときに効果的なのは距離ではありません。単価と、集められる人数と、日本側にかかる手間です。
この記事では、その3つを順番に数字で見ていきます。読み終わるころには、御社の案件がどちらに寄るのかが言えるようになります。
どちらが合うか、案件の中身を見ながら整理します
日本人窓口がどこまで受け持つのかを、具体的にご説明します。ベトナムオフショア開発の体制を見る →
03費用と体制の比較|項目別の違い
要点:単価はニアショアが月55〜85万円、ベトナムのオフショアが月38〜55万円が目安です。ただ立ち上げにかかる期間と、1案件で確保しやすい人数が逆になります。金額だけの比較はオフショア開発の費用相場もあわせてご確認ください。
まず、実務で聞かれることの多い項目を並べて比べます。数字は案件によって動きますので、幅で見てください。
| 項目 | ニアショア開発 | オフショア開発(ベトナム) |
|---|---|---|
| 委託先 | 国内の地方拠点(札幌・仙台・福岡・沖縄など) | ハノイ・ダナン・ホーチミン |
| プログラマー単価(月) | 55〜85万円 | 38〜55万円 |
| 時差 | なし | 2時間 |
| やりとりの言語 | 日本語のみ | 窓口は日本語、開発現場はベトナム語 |
| 着手までの期間 | 2〜4週間 | 4〜8週間 |
| 1案件で集めやすい人数 | 2〜5名 | 5〜20名 |
| 相性のよい案件規模 | 10人月未満の追加開発・メンテナンス | 15人月以上の新規開発・継続開発 |
出典:ZenWeb Japanの案件実績と国内の見積り水準にもとづく整理(2024〜2026年)。
目を引くのは最後の2行です。単価が安いはずのオフショアが、小さい案件では推奨されていません。理由は次の章で見ていきます。
04「国内なら安い」は成り立ちません
要点:ニアショアを選ぶ理由をコスト削減に置くと、期待が外れやすくなります。地方拠点でも国内の人件費で動いているため、東京の会社と比べた差は2〜3割ほどにとどまります。単価の考え方は人月単価と工数の仕組みもご参照ください。
ニアショアを「安い国内」と紹介する記事は少なくありません。ただ、実際の見積りを並べると、印象ほどの差は出ないことがほとんどです。
当然といえば当然です。札幌の技術者も福岡の技術者も、日本国内の給与水準で働いています。オフィス賃料や採用費に差はありますが、人件費そのものが半分になるわけではありません。
ですから、ニアショアの価値はコスト削減ではないところにあります。実務で効いてくるのは、次の3点です。
- 同じ時間に会話できます。時差がないため、午後に投げた質問がその日のうちに片づきます。
- 商習慣の説明が要りません。請求書の締め日や検収の進め方を、前提から説明する手間が省けます。
- 訪問できます。要件定義の初回や検収前など、要所で顔を合わせられます。
逆にいえば、この3つが不要な案件でニアショアを選ぶ理由は弱くなります。仕様がすでに固まっていて、人数を増やして早く作りたい。そういう案件では、単価差がそのまま予算差になります。
05規模で変わる、実質のコスト差
要点:単価だけを見ればオフショアは3〜4割安く見えます。ところが管理工数と立ち上げ費用を足すと、5人月以下の案件では差がほぼ消えます。実質の差が開き始めるのは、10人月を超えたあたりからです。
オフショアには、単価表に載らない費用があります。ブリッジSEの稼働、仕様書の作り込み、初期の手直し。これらを人月に換算して足したものが、実質のコストです。
| 開発規模 | 名目の単価差 | 管理工数を含めた実質差 |
|---|---|---|
| 3人月 | 35%安い | 5%高い |
| 5人月 | 36%安い | 2%安い |
| 10人月 | 37%安い | 11%安い |
| 20人月 | 38%安い | 21%安い |
| 40人月以上 | 38%安い | 27%安い |
出典:ZenWeb Japanの案件実績にもとづく整理(管理工数・立ち上げ費用を含む総額比較、2024〜2026年)。
名目の単価差はどの規模でもほぼ一定です。それでも実質差が動くのは、管理側の費用が案件の大きさにあまり比例しないからです。3人月でも40人月でも、窓口はひとり必要になります。
ですから、3人月の案件をオフショアに出すと逆に高くつくことがあります。国別の単価水準そのものはオフショア開発の国別比較で扱っていますので、そちらもあわせてどうぞ。
06立ち上がりの速さと、その後の伸び
要点:最初の3か月はニアショアが速く進みます。ただ半年を過ぎるとオフショアが追いつき、その後は上回ることが多くなります。短期で終わる案件と、続けていく案件で答えが変わるということです。
ここは、比較記事であまり数字にされない部分です。委託先が実際にどれくらい戦力になっているかを、契約人数に対する実効稼働率として月ごとに見てみます。
| 経過月 | ニアショア | オフショア | 状況 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 75% | 45% | 仕様の読み合わせが中心 |
| 2か月目 | 88% | 65% | 実装が本格化 |
| 3か月目 | 93% | 80% | レビューの型が固まる |
| 6か月目 | 94% | 92% | ほぼ横並びになる |
| 12か月目 | 94% | 97% | 同じ人が残り、聞き直しが減る |
出典:ZenWeb Japanの案件実績にもとづく整理(契約人数に対する実効稼働率、2024〜2026年)。
1か月目の差は、そのまま初期の学習コストです。オフショアは業務そのものを一から説明する必要があるため、最初の1〜2か月は数字が伸びません。
一方で12か月目は逆転しています。同じメンバーが残り続けるほど、聞き直しが減っていくからです。この伸び方を前提に組むのがラボ型開発で、案件を続けるつもりがあるなら検討する価値があります。見積もりから納品までの進め方も、この立ち上がりを織り込んで組み立てます。
07発注側の担当者にかかる時間
要点:見落とされやすいのが、日本側の担当者が使う時間です。ニアショアは月26時間ほど、日本人窓口のあるオフショアで月38時間ほど。窓口を挟まず直接やりとりすると、一気に月66時間まで膨らみます。
委託した分だけ社内が楽になる、とは限りません。むしろ相手が増えるぶん、確認の時間は増えます。その時間を作業の種類ごとに分けて比べます。
| 委託形態 | 仕様説明・質問対応 | 進捗確認・定例 | 検収・テスト | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| ニアショア | 12時間 | 6時間 | 8時間 | 26時間 |
| オフショア(日本人窓口あり) | 18時間 | 9時間 | 11時間 | 38時間 |
| オフショア(窓口なし・直取引) | 32時間 | 16時間 | 18時間 | 66時間 |
出典:ZenWeb Japanの案件実績にもとづく整理(発注側担当者1名あたりの月間工数、2024〜2026年)。
注目していただきたいのは、真ん中と一番下の差です。同じオフショアでも、窓口の有無で28時間ちがいます。月に28時間といえば、担当者の3.5営業日ぶんです。
この差を埋めるのがブリッジSEの仕事です。単価の安さだけで直取引を選ぶと、浮いた金額を担当者の残業で払い直すことになりかねません。日々のやりとりの整え方はオフショア開発のコミュニケーション対策にまとめています。
社内にどれくらい負担がかかるか、先に知っておきませんか
御社の体制に合わせて、担当者の月間工数の目安をご説明します。Webシステム開発のサービス内容を見る →
08人を確保できるか|国内の人材不足という前提
要点:ニアショアの弱点は単価ではなく、必要な人数をそろえにくいことです。国内のIT人材は今後も不足が続く見通しで、地方拠点ほど採用競争の影響を受けます。10名規模を短期で集めたい案件では、選択肢が限られます。
「ニアショアで進めたい」というご相談で、いちばん多く突き当たるのがここです。単価は折り合ったのに、人が空いていない。
背景には、国内全体の人材不足があります。経済産業省のIT人材需給に関する調査では、2030年時点でIT人材の需給ギャップが約45万人に達すると試算されています(需要の伸びを年2.7%とした中位の想定)。この前提は、地方拠点でも変わりません。
実務上は、次のように考えると見通しが立ちます。
- 2〜3名なら、ニアショアでも見つかります。既存システムの改修やメンテナンスであれば、2〜4週間で着手できることが多いです。
- 5名を超えると、待ち時間が出ます。手が空くタイミングを待つか、複数社に分けるかの判断になります。
- 10名以上を短期でそろえるのは困難です。ここは、オフショアの人数規模が効いてくる領域です。
逆にいえば、少人数で長く付き合いたい案件であれば、ニアショアは十分に現実的な選択肢です。会社を選ぶ視点そのものはオフショア開発会社の選び方と共通していますので、そちらもご参考になります。
09契約の注意点|線引きはどちらも同じです
要点:国内だから契約が楽、ということはありません。請負か準委任か、成果物の範囲をどう決めるか、直接指示をどこまで出せるか。この3点はニアショアでもオフショアでも同じように問われます。
ニアショアを「国内だから安心」と受け取ると、契約の詰めが甘くなることがあります。実際には、国内委託のほうがトラブルになりやすい論点もあります。
ひとつは契約形態です。請負なら成果物に責任が生じ、準委任なら作業時間に対して支払います。どちらを選ぶかで検収の考え方が変わりますので、工程ごとの整理はIPAの情報システム・モデル取引・契約書(第二版)に目を通しておくと迷いません。
もうひとつが指示の出し方です。国内で距離が近いぶん、相手の技術者へ直接、日々の作業を割り振ってしまう場面が起きがちです。請負や準委任でこれをすると、労働者派遣に近い実態と見なされるおそれがあります。厚生労働省は判断の考え方を労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準の疑義応答集で公開しています。
実務では、指示は必ず先方の責任者を通す。伝えるのは目的と完成条件まで。この2つを守っておけば、まず問題になりません。契約の型そのものの選び方は、外注と内製の判断基準でも扱っています。
10ニアショアが向くケース、オフショアが向くケース
要点:短期・小規模・仕様が動く案件はニアショア、長期・中規模以上・仕様が固まった案件はオフショアが噛み合います。品質そのものはどちらでも管理体制しだいで、オフショア開発の品質は国では決まりません。
ここまでの数字を、案件の形にあてはめて整理します。まずニアショアが噛み合う場面です。
- 3〜6か月で終わる案件。立ち上がりの速さがそのまま効きます。
- 仕様が動きながら進む案件。その場で相談して決められる距離感が生きます。
- 必要な人数が2〜4名の案件。この規模なら、国内でも確保しやすい範囲です。
- 現地に足を運びたい案件。製造や物流など、現場を見ないと仕様が固まらない領域です。
一方、オフショアが噛み合うのは次のような場面です。
- 1年以上続く開発。同じメンバーが残るほど、生産性が上がっていきます。
- 15人月を超える規模。単価差が管理費用を明確に上回ります。
- 人数を増やして納期を縮めたい案件。5名以上を短期でそろえられます。
- メンテナンス運用まで含めて任せたい案件。長く同じ体制を維持しやすくなります。
どちらにも当てはまらない、と感じられた場合は、次章の組み合わせをご検討ください。
11両方を使うという選び方
要点:二者択一で考える必要はありません。要件定義と検収を国内で、実装を海外でというように工程で分ける組み方があります。どちらか一方に決めきれない案件では、これが現実的な落としどころになります。
比較記事の多くは、どちらかを選ぶ前提で書かれています。ただ実際の案件では、工程ごとに分ける形がしばしば選ばれます。
分け方の考え方は単純です。人と会って決める工程は国内に、手を動かす工程は海外に置きます。
- 要件定義は国内で。現場を見て、関係者と顔を合わせて固めます。
- 設計と実装は海外で。人数を投入して、期間を圧縮します。
- 受け入れテストは国内で。実際の業務データで確認します。
- メンテナンス運用は海外で継続。作った人が残るぶん、対応が早くなります。
この形の要は、要件定義の精度です。ここが甘いまま実装へ渡すと、距離のぶんだけ手直しが重くなります。進め方は要件定義の基本にまとめました。
ZenWeb Japanも、日本側で要件を固めてからベトナムのチームへ渡す形をとっています。窓口は日本人ですので、御社から見れば日本語でのやりとりだけで完結します。
工程の分け方から、ご一緒に考えます
どこまでを国内で固め、どこから海外に渡すかを案件に合わせて設計します。オフショア開発の進め方を確認する →
12判断の手順|4つの質問で決める
要点:規模・期間・人数・仕様の固まり具合。この4つを順に確認すれば、ほとんどの案件は自然に片方へ寄ります。迷ったら、いちばん上の規模から見てください。
ニアショアとオフショアを選ぶ手順
社内で検討される際は、次の順番でご確認ください。上から順に見ていくと、途中で答えが出ます。
- 開発規模を人月で出す。10人月未満ならニアショア寄り、15人月以上ならオフショア寄りです。ここで決まる案件が半分ほどあります。
- 続く期間を確認する。半年で終わるならニアショア、1年以上続くならオフショアが有利になります。
- 必要な人数を数える。4名までなら国内でも確保できます。5名を超えるなら、待ち時間を覚悟するか海外を検討します。
- 仕様の固まり具合を見る。まだ動くならニアショアか、要件定義だけ国内に残すハイブリッドにします。
4つとも判断がつかない場合は、要件定義だけを先に切り出して小さく発注する方法があります。そこで固まった仕様をもとに、実装の委託先をあらためて選べば十分です。
13まとめ|距離ではなく、体制で選んでください
要点:ニアショアとオフショアの違いは、単価・確保できる人数・日本側の手間に集約されます。小さく短い案件はニアショア、大きく長い案件はオフショア。決めきれないときは工程で分けるという答えもあります。
ここまで見てきたとおり、どちらが優れているという話ではありませんでした。10人月未満の案件をオフショアに出せば割高になりますし、10名規模の開発をニアショアで組もうとすれば人が集まりません。案件の形が、答えを決めています。
そして共通しているのは、日本側の体制が結果を左右するという点です。仕様を判定できる形で渡し、質問に早く答える。この2つができていれば、委託先が札幌でもハノイでも案件は進みます。うまくいかない原因の多くは、オフショア開発の失敗事例を見ても、距離ではなく体制の側にありました。
体制づくりからご相談いただけましたら、ベトナムオフショア開発の進め方に沿って具体的にご説明します。
14よくある質問
要点:ニアショアとオフショアの比較について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。費用の見方、切り替えの可否、品質の考え方などを扱っています。
1. ニアショアのほうが品質は高いのでしょうか
場所では決まりません。テストの基準とレビューの回数で決まります。同じ基準を渡せば、結果はほぼ同じ水準になります。
2. 途中でニアショアからオフショアへ切り替えられますか
切り替えられます。ただし引き継ぎに1〜2か月を見てください。設計書とテスト仕様書が残っているかどうかで、期間が変わります。
3. ZenWeb Japanの料金はいくらですか
案件ごとのお見積りとしています。必要な機能と人数、期間によって金額が変わるためです。概算だけでも、ご相談いただければお出しします。
4. ニアショアとオフショアを同時に使うと管理が大変になりませんか
窓口を1つにまとめれば、負担は大きく変わりません。逆に、両方と個別にやりとりする形にすると一気に重くなります。
5. 小さな改修だけを頼むこともできますか
可能です。ただし数人日の作業であれば、立ち上げの手間を考えると国内で完結させたほうが早い場合もあります。案件の中身を伺ったうえでご提案します。
どちらが合うか、いっしょに見極めます
ZenWeb Japanは2000年創業・PNHグループのWeb制作・システム開発会社です。日本人窓口とベトナム開発チームの体制で、業務システムからECサイトまで「日本品質を適正価格で」ご提供します。無料相談では、御社の案件規模に合わせた体制の組み方を具体的にご説明します。
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